中古車個人売買の現状
欧米や東南アジアでは中古車の個人売買は広く普及しています。しかし、日本では普及していません。その理由はいくつか考えられますが、課題を解決すれば普及するかというと、疑問が残ります。
理由は過去に、当社を含め多くの企業がそこにチャレンジし、個人売買時に、売り手と買い手双方が抱える課題を洗い出し、考えられる全ての消費者の不安や不満を解消するサービスを提供しましたが上手くいきませんでした。
現在も中古車個人売買のプラットフォームでうまく行っているサービスはなく、中古車の個人売買も普及しておりません。
普及しない理由は?
ここでもう一度、中古車個人売買が普及しない原因について考えてみましょう。ユーザーの課題を解決する事はできたが、一つ足りなかったのは「ユーザーの成功体験が少なかった」というのが大きな理由であると考えます。
新たな文化、サービスを提供する際に重要なのはユーザーに成功体験を提供する事です。「このサービス使って良かった!」と思わせる事ができれば、それが口コミとして広がり、そのサービスが普及する後押しになるからです。当然ながら成功体験だけでなく、失敗体験を与えてしまう事も少なくありません。このように成功体験と失敗体験両方のフィードバックを頂き、それを改善し、失敗体験を減らしていく事でその文化、サービスは普及していくのです。
しかし、日本人が一生のうちに自動車を購入する回数は、そこまで多くありません。恐らく3回〜5回が平均的でしょうか?時計、車、不動産など高額なモノになればなるほど、購入する頻度は少なくなるのは当然ですよね。
要するに、そもそも自動車の取引の回数が、他の商品(洋服、日用品、家電など)と比べ圧倒的に少ない為、個人売買で購入しようとするユーザーも少なく、結果的に成功体験を少ししか提供できなかったのです。更に商品が高額な為、失敗体験をしたユーザーの口コミは、他のユーザーに大きな不安を与え、取引回数を減らす原因となり、負のスパイラルに陥ってしまったのです。
東南アジアに大きなヒントがあった
15年に渡る日本でのチャレンジに終止符をうち、日本市場を諦め東南アジア市場で新たなチャレンジを始めようと、2015年に東南アジアのラオスに移住しました。(このラオスでのチャレンジについて別の記事で触れようと思います)
ラオスでは中古車の個人売買が普及しており、やり方はとてもシンプルで、下記のように紙に「売ります 電話番号」を記載し車に貼り付けるだけです。これ実は非常に効果的なやり方なんです。
何故かと言うと、このやり方は日本の自動車販売会社(新車、中古車含む)が実践している、車を売る為に一番必要な事と同様の効果を与えているからです。
日本の自動車販売店が実践している、車を売る為に一番効果的な事は「お客を来店させ、現車を見せる事」で、これは昔も今も変わりません。自分が興味を持った車を目の前に見せられたら、その時点で購買意欲が刺激され購入確率はグッと上がります。最後のクロージングは試乗をして問題なければ90%以上が購入を決断するからです。他社の車の方が安かったからそちらも見てみたいという方は、そこまで多くはありません。
目の前に現車を見せられると、多少の値段の違いや、サービスの比較など関係なくなってしまうのです。要するに我々が売り手、買い手の不安要素だと思っていた事がどうでもよくなってしまうのです。
ラオスの個人売買のやり方が優秀なのは、興味を示したユーザーに対して、「目の前に現車を見せる」と言う事を既に達成しているからです。この後、電話をするとオーナーが現れ、試乗し価格交渉をして取引が成立していきます。
日本の個人売買プラットフォームが実現できていないのが、この「現車を見せる」という所です。サイトを通じて写真を見る事はできますが、写真だけでは購買意欲を高める事はできません。個人売買ですと、見に来てもらう事が非常に難しいのです。
見に来ていただく為には、綺麗な写真を撮影する必要があるかと思いますが、個人売買で車を売ろうとするユーザーが、売れるかどうかわからないのに、たくさんの綺麗な写真を撮影するのはハードルが高いので、ここも課題の一つと考えられます。しかし、この課題を解決するよりも、ラオス流(東南アジア流)のシンプルなやり方の方が、簡単に解決できますよね?
ラオス流を試してみた
日本の中古車個人売買を普及させる為に、一つの実験としてラオス流のやり方を試してみました。その為に、駐車場を借りて、在庫車を一台購入しました。購入したのはAudi A4アバントです。
そして、紙に「売ります 電話番号」を記載しようとしましたが、今回はエアプラというサービスを利用しました。これは簡単にプライスボードが作成できるというサービスです。興味のある方はエアプラサイトをご確認ください。
準備を整えて、車に電話番号を記載したプライスボードを取り付け、あとは電話を待つだけです。
下記に動画を載せておきます。ブログで公開を考えていなかった為、写真や動画が少なく申し訳ありません。
結果として、1週間で6件の問い合わせを頂きました。この近辺に自宅や職場のある方で、目黒通りにはアウディなどのディーラーが立ち並んでいる為、興味を示してくれた方が多かったのかもしれません。最終的に、偶然にも仕事でこの辺りに来ていた方にお譲りする事になりました。
問い合わせ頂いた方に反応を聞いてみた所、やはり最初は怪しいと思ったが、プライスボードがしっかりしていたので、電話してみようと思ったとの事でした。その他に、この近辺にあるお店の方や知り合いに、「あの場所にプライスボードが付いたAudiがあったの知ってますか?」と質問したら、ほとんどの方が見たと答えてくれて、やはりこのやり方は非常に目立つ事がわかりました。
並行してヤフオクにも出品しておりましたが、2週間で質問が1回あっただけで、売れませんでした。
結論 ラオス流は費用対効果が高い
結果として、このやり方はアリだなと思いました。ヤフオクや個人間マーケットプレイス、カーセンサーなどに掲載したとしても、よほどの人気車種でない限り、1週間で6件の問い合わせはありません。販売価格も業者オークションでの売却相場で売れたので、そう考えると、このやり方は非常に効果的なやり方であり、日本で個人間売買を普及させる為の一つのヒントになると感じました。
日本で中古車個人売買を普及させる為の実験としては、大成功でしたね。今後はこの結果を踏まえ、どのようにサービスを展開するか考えていきたいと思います。
2012年 Audi A4 中古車相場